読書録

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証言・昭和の俳句 上下巻 各1700円  角川選書

「昭和俳句の証言者として、学徒出陣世代の俳人を中心に、何人かの重要な作家たちの本格的取材、つまり時間をかけた聞き書きを、今世紀のうちに、誰かが本気になってやっておくべきでしょう」と編集長(総合誌『俳句』)に提案されたことで、黒田先生ご自身が聞き手となり刊行された証言録です。


聞き手になるにあたって次の条件を提示されました。
①証言者の顔ぶれは最初から確定し、メンバーの方々に確認と納得をしていただく。
②準備期間を十分にとる。
③証言の収録に時間をかける。
④『俳句』掲載のときは、すべて証言者の一人語りの形式に統一。
  事前調査及び打ち合せの際の黒田の質問項目は小見出しに生かす。
⑤証言時点での自筆昨年譜と自選五十句をいただく。
⑥一人語りの体裁となった証言内容のチェック、ゲラ校正の時間を
  証言者に十分差し上げる。
⑦写真を多く載せる。証言者所有提供のものに限らず、角川書店、
  俳句文学館ライブラリーほかの写真も集めて生かす。
⑧昭和史を俳句から眺めた未来への遺産となる記録として広く読者を
  獲得できる内容を目指す。
⑨証言者のラインナップは流派を超えて大胆に絞り決定してゆくこと。
⑩『俳句』編集長は打ち合わせ、証言の場に始終同席。

これらの条件がすべてがととのえられて証言収録がおこなわれました。
この企画が具体的にどのように遂行されたかが一目でわかる内容です。

証言者は桂信子・鈴木六林男・草間時彦・金子兜太・成田千空・古館曹人・津田清子・
古沢太穂・沢木欣一・佐藤鬼房・中村苑子・深見けん二・三橋敏男の13名です。

第一章 桂信子のはじめに「証言者・聞き手・編集者・速記者・カメラマンが一座建立。その世界にいきいきと参加。」とあります。証言者の資料を詠み尽くしたうえでインタビューされようとしている聞き手の高揚感がつたわる一文です。

あとがきに「最年長の中村苑子先生から最年少の深見けん二先生まで、どなたの発言も戦争に深くかかわっておられます」「最終ランナーをつとめられた三橋先生のご発言━戦争は憎むべきもの、反対するべきものに決まってますけれど、〈あやまちはくりかえします秋の暮〉じゃないけれど、何年かたって被害をこうむった過去の体験者がいなくなれば、また始まりますね。いずれにせよ、昭和のまちがった戦争の記憶が世間的に近ごろめっきり風化してしまった観がありますが、少なくとも体験者としては生きているうちに、戦争体験の真実の一端なりとせめて俳句に言い残しておきたい。単に戦争反対という言い方じゃなく、ずしりと来るような戦争俳句をね━のように、私はひとりの聞き手、証言の引き出し役を担当できたこの十三人の巨人の発言集が風化してゆくのを惜しみます。ここに収められた言葉は〈未来への予言〉、やさしい語り口で述べられた未来へのメッセージです」とあります。

13名の自選50句・略年譜・写真、そして証言は平成の今を生きる俳句実作者に大切なものが何かを問い直してくれます。
第12章 深見けん二の証言は高浜虚子や山口青邨のこと、黒田先生がご参加されていた「木曜会」のことなど、興味深いものになっています。
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by m4s1o3u6e2n9t1n7y | 2013-02-13 17:32